#06 「fabricated myth」解説(プロット)

「fabricated myth」作品解説です。その二。
作中で進行する物語のプロットについて述べてます。
というか二つに跨ると思ってなかった。力使いすぎ。

プロット

第0シーン / オープニング

遙か昔、まだ口述のみでしか記録が伝承されないほどの昔。
あるところに、一神教を信仰する少数民族がいた。
彼等の神は長らく民族神といった形で信仰されてきたが、ややアニミズム的な信仰にも似たものがあり、彼等は〈シンボルとして表す事の出来ない、偉大な神〉が森羅万象を創造した、という意識から、目に見えるような「神」の像は作らずに、一神教に端を発する自然崇拝のような信仰を行っていた。

第1シーン / 偶像の創造と崇拝

ある時、ある彫刻師が、その信仰心ゆえに「神」の像=偶像としての〈人形〉を制作してしまう。元来信仰心が非常に強い民族だったため、その「神」のシンボルを人々は強く受け入れた。
この〈人形〉の登場によって、「一神教に端を発する自然宗教」という彼らの信仰形態は、純粋な一神教としての様相へ変化していく。
人々は日夜〈人形〉を取り囲み祈り続ける。その祈りは段々と狂信的なものへと変化し、〈人形〉はその崇拝者の〈眼〉に四六時中取り囲まれることとなる。

第2シーン / 偶像の受命、奇跡の実現

崇拝者達の熱烈な信奉によって、〈人形〉は遂に神より意識と生命が与えられる。〈人形〉の肌には〈血管〉が浮き上がり、〈心臓〉はどくどくと〈人形〉の内奥で波打つ。〈人形〉に神より意識が与えられたことによって、彼らの一神教崇拝は宗教という形で成立し、〈人形〉を中心に据えた紋章が生み出される。
生命を与えられた〈人形〉は数々の奇跡を行う。街は色鮮やかな光に包まれ、彼らの〈血管〉の形にも似た樹木が次々と生えていく。崇拝者たちの〈眼〉は〈人形〉を取り囲み、そのさまを見つめる。

第3シーン / 偶像への懐疑

〈人形〉が行った奇跡は初めは人々に受け入れられるが、やがて人々は〈人形〉の行っていた奇跡に疑念を抱くようになる。
〈人形〉が奇跡を行うまでは、奇跡の存在は彼らの心の中で理想的なものとして存在し、その心の中に抱いていた「奇跡」は、狂信によってあまりに肥大化し過ぎていた。彼らの肥大化した「奇跡」と、実際に〈人形〉が行った「奇跡」とのギャップが埋め切れず、反動として次第に〈人形〉への不信が募っていく。
そのうち、彼らの民族の中に偶像崇拝を否定する元崇拝者の一派が生まれ、彼らは、神から生命を受けた〈人形〉の姿を模して作った〈人形〉の模造品を制作し、それに〈目隠し〉をさせ〈釘〉を打ち付ける、などのパフォーマンスによって彼らの懐疑を増大させる。

第4シーン / 偶像破壊

〈人形〉の模造品に〈釘〉を打ち付けるパフォーマンスは激化し、人々に伝播する。彼らは遂に〈人形〉の模造品を破壊するようになる。
やがて、〈人形〉に対する懐疑がある瞬間を越えた時、人々は神から命を受けた〈人形〉自身の破壊を目論む。意識ある〈人形〉は人々の手により処刑場に運ばれ、その瞳からは〈涙〉が零れ落ちる。
〈人形〉は〈釘〉によって両手両脚を板に打ち付けられ、やがて胸に〈釘〉を打たれて絶命する。

第5シーン / エンディング

〈人形〉の首は刈り取られ、晒し首として台の上に置かれる。血が切断面から垂れ落ちる。人々は〈人形〉の首を捧げ、こう謳いながら輪になって踊る。
「God's in His heaven, (神様は天にいらっしゃる、)
All's right with the world!  (世界はすべて神の思し召しの通りだわ!)」