#18 sasakure.UK「深海のリトルクライ feat. 土岐麻子」PVを制作しました

sasakure.UK】深海のリトルクライ feat. 土岐麻子【Music Video】


――想いよ、さあ、『愛して』ますと、叫ぶんだ!

sasakure.UK メジャー2ndアルバム『幻実アイソーポス』収録曲
http://www.umaa.net/releases/the_fantastic_reality_of_aesop/

Music, Lyrics & Arrangement : sasakure.UK http://sasakuration.com/
Vocal : 土岐麻子 http://www.tokiasako.com/
Guitar : 真(SIN) http://www.pscompany.co.jp/sin/
Bass : 千ヶ崎学
Illustration : 茶ころ http://puna.bona.jp/
Movie & Design : eau. http://lamer-e.tv/

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 sasakure.UKさんの楽曲『深海のリトルクライ feat. 土岐麻子』PVを担当させていただきました!歌唱はなんと元Cymbals土岐麻子さん!音ゲーに詳しい方だと「Little Prayer」の歌唱を担当している方として知っている方も多いのではないでしょうか。
 ささくれさんの豊かな音の中に内に秘めた芯の強さを持った素敵な曲に土岐さんの優しい歌声が混ざり合った奇跡のような楽曲に、このような形で携わることができ、本当にこれ以上はない至福です。お話をくださったささくれさん、また『幻実アイソーポス』制作チームの皆様、そして視聴者の皆様、改めてほんとうにありがとうございました!
 イラストはささくれさんの楽曲のイラストやデザインの多くを制作し、アルバム『幻実アイソーポス』でもジャケットイラストやブックレット全頁のイラストを担当している茶ころさんです。二人で細部に至るまで色々と意見を出し合い、徹底的に煮詰めあって制作しました。制作中に交換し合った、Word文章でA4用紙で4枚程度にまで膨れ上がったチェックシートのデータは家宝にします。


 そしてこの楽曲が収録されたアルバム『幻実アイソーポス』は4.11リリースです!初回限定盤には『深海のリトルクライ feat. 土岐麻子』のPV高画質版も収録されます。この間サンプルを触らせていただいたのですが、打合せから段々とデザインが出来ていくのを見ていたので、形になったものを見ると本当に感慨深いです……!
 他の楽曲やPV、ブックレットも本当に素敵で、ささくれさんの紡ぐ音楽はもちろんのこと、デザインや映像でも珠玉の作品の詰合せになっております。是非お買い求めください!


 ちなみにとらのあなで初回限定盤を予約すると、『深海のリトルクライ』PVを基にしたA3ポスターも付いてきます!
 http://www.toranoana.jp/mailorder/article/21/0006/52/44/210006524441.html
 僕が作成したシンボルを茶ころさんに渡してデザインを組んでもらったものですが、深海の中にぼんやりと現れた天の川といったような、とても素敵な画面になっていて嬉しかったです。
 こちらも合わせてよろしくお願いいたします。
 

 以下、PVの解説や詳しい制作など。


 PVのアウトラインをまとめてみました。参考程度にどうぞ。

 今回はささくれさんの方で物語の構成が固まっていたので、そのささくれさんの物語をどのように再解釈し、映像に落としていくかを茶ころさんと相談しながら決めていきました。
 ツールは今回はFlash単体です。結局AfterEffects使わなかった……

「人魚姫」パート

 ささくれさんの楽曲のコンセプトの一つである「有機と無機の対比」を活かしながら、そこに、
 ・「有機=具象、手に取れる現実の世界、深海人魚姫の今いる世界」
 ・「無機=抽象、純粋形態、イデア・理想形への憧憬、王子の住んでいる地上の世界」
 といった意味を落とし込んでいます。無機的なイメージに三角形を用いているのは、歌詞中の「ナイフ」という部分にあるように、人魚姫の身体に突き刺さっていくような痛さと苦しさを持った世界として表現したかった面があります。
 
 有機的な世界=深海と、無機的な世界=地上を媒介するのは、ジョアン・ミロというシュルレアリスム作家の絵画によく見られる、「バイオモルフィック(biomorphic、有機的造形)」のモチーフ群です。
 ジョアン・ミロ - Wikipedia
 google画像検索 - Joan Miró
 抽象のようだけど、どことなく生物的、有機的な雰囲気を匂わせるこのバイオモルフィックのイメージに、有機的な世界と無機的な世界の媒介を託しています。また、シュルレアリスム絵画の目標の一つである、「画面の中に人間の無意識的な欲動を表出させる」という文脈から、人魚姫の王子への無意識的な欲望を重ね合わせています。時間経過に従って段々とシャープな、痛みを伴った世界へと人魚姫が移行していくさまが表現できていれば、と思います。
 また、ささくれさんの方から、「人魚姫の原文を効果的に用いて欲しい」というリクエストがあったので、デンマーク語版のアンデルセン童話「人魚姫」の原文を各所に散りばめています。装飾の面でも、物語が進行していく雰囲気を滲み出させる面においても、非常に効果的な形で使うことができました。

 

 前奏や部分部分の間奏に現れる、上のような構図のシーンは、本でいう「扉」や「中扉」をイメージしています。
 このシーンから次の章が始まっていくイメージです。また、同じ構図を要所要所で反復することで全体の構成を可視化させる目的もあります。

「現実」パート

 「-No, I think that it's just a small lie...」で、今までの世界が物語世界であることのネタばらしがされ、そこから現実の少女が「人魚姫」の物語に感化され、自らの物語を作っていくパートへと進んでいきます。
 かっちりした構成のマーチから、変拍子によって曲調ががらっと柔らかく優しい雰囲気に変わるので、その夢想的な雰囲気を浮遊感あるモーションやイージングを使った画面で表していきました。


 少女の夢想。意識の境界線を揺蕩っているので、バイオモルフィックの要素を高めにしイージングでかなり揺らしています。


 今まで出てきたモチーフ群をバックに歩いていく少女。「人魚姫」の物語を心に秘めつつ、新たな物語に向かって進んでいく少女の心情を映しています。
 自分でもお気に入りのシーンです。茶ころさんと「これは来ましたよ……!!」みたいな感じで盛り上がってました。
 茶ころさんのイラストも、「人魚姫」パートでは色彩豊かで絵本のような雰囲気で描き、「現実」パートでははっきりとした線で描く、といった対比で描かれているようです。茶ころさんが随所でさまざまな提案を出していただいたり、臨機応変に対応してくださったりしていただき、本当に感謝しきりです。自分ではそういう表現だと考えてなかった部分に茶ころさんが新しい見方を提案してくれて、それで先の展開がどんどん煮詰まっていく、といったことが何度もあり、コラボの醍醐味と言えるような制作になりました。楽しかった……!

あとがき

 重ね重ね、このような素敵な楽曲に映像を付ける機会をいただき感無量です。全員の持ち味が融けあって混ざり合った、本当に素敵な作品になったと思います。
 ささくれさんの楽曲は既にストーリーが出来上がっているので、作品の中にストーリーを埋め込んで作っていく自分の作風にマッチして、ささくれさんのストーリーをどう落とし込んでいこうかという想像がどんどんと広がっていき、とっても作り易かったです。また何かしらの形で御一緒できればと思います……!

おまけ

 時間が無かったので珍しく絵コンテとか描いてました。結局あまり使ってないけど。