#04 新作「fabricated myth」公開しました

http://lamer-e.tv/movie/fabricatedmyth0.html

FRENZ 2010 (http://f-renz.jp/) 出展作品。
具象と抽象の狭間で紡がれる壮大な物語を。

以下制作記など。二年ぶりに作ったので語るよ。
作品解説もまた恐ろしく長くなるので、次の記事でまとめたいと思います。

ほんとPC買い換えたいアタシ死んじゃう

改めまして、FRENZ 2010 本当におつかれさまでした。
夜の部第一部のトリとして上映されました。「夜の部に上映してくださいー」と運営の方にお願いしていたのですが、まさか内容的にあの早い段階で流されると思わなかった。
あと運営から18禁アナウンスを受けるのではないかと内心期待していたのですが、深夜の部はこれどころではない作品がわんさか出てきて、まだまだだなーと思いました。抽象に近いモーション・グラフィクスが18禁指定されたらなかなか面白いよなーと思っていたのですが。残念。

二年ぶりに大きな作品を制作しましたが、本当にパソコンのスペックと忍耐との戦いでした。
使ってるPCが未だに七年前から動かしているCeleronなので、最後の方はキーフレーム1個打ったりレイヤー1枚入れたりするのに各々20秒くらい待たされる状態でした。我ながら確実に寿命を三年くらい削って作ったと思う。キーフレームやレイヤーを入れている間の待ち時間で、かわぐちかいじの「沈黙の艦隊」全32巻を読み切れるレベルでした。
沈黙の艦隊」は中一くらいに一度通して読んだことがあったのですが、改めて知識を持って読み通すと非常に奥深く示唆に富んでいて面白いですね。このまま書き進めると制作記でなく「沈黙の艦隊」に関する稚拙な感想文になってしまうのでやめておこう。

作品に関して

作品に関しては、まずは「ハサミ」のモチーフで何かやりたいなあ、と思い、序盤のハサミが落ちるシーンだけ作ったのが二年前でした。
しかし、その先が思い付かず二年近く放置していたのですが、ここ二年の間で「夜想」やシュヴァンクマイエル、シュルレアリズム等々の方面にも興味を持つようになって、その流れから「ハサミに人形を組み合わせれば素敵なのでは」という発想で、「人形」のモチーフを組み合わせたのが半年前くらいでした。
ちなみに、球体関節人形作家では三浦悦子さんという方の作品が一番好きです。外部からの悪意を感じさせるような残虐さを孕みながら、それでいて人形自身は儚く美しい、その悪意と耽美性の相克を感じ取れるような作品群です。
今作「fabricated myth」もテーマ性の設定に於いて「悪意と耽美性の相克」を意識してみました。その表現にあたりモチーフがやや多くなってしまいましたが、うまくその辺りの相克を引き出す事が出来たのではないか、と思います。

テーマ性を付随させることついて

僕は基本的に、あるシンボルを一つのモチーフとしてまずモーションを作り、そのモチーフから「どのようなテーマで行こうかなー」というのを模索しながら進めていくような作り方をしています。そして、作品の中盤あたりからは、それによって出来上がったテーマから逆算するようにして、一つ一つのシーンを作っていきます。
「incident」とかはまさにそれで、取り敢えず「×」のシンボルを回して、「おーこれいけるじゃん」と思いながら進めていくのですが、途中で「これなんか『×』がどんどん分解していってるみたいだよなー」というように思い始め、「それだったら『物体の解体と再構築』みたいなテーマで行こうか」みたいな感じでテーマが決まっていきます。なので途中から作品を作ったりすることが出来ないタイプ。

今作も「『ハサミ』と『人形』からどうやって膨らませていくかなー」というところを出発点として制作しました。
最初は飛浩隆氏のSF「ラギッド・ガール」の副題「unweaving the humanbeing」から連想して、「人間が情報の糸として解体されていく」といった形のテーマを思い浮かべていたのですが、上手く全体をまとめ上げるプロットが思い浮かばなかったので、「偶像崇拝」というテーマを基軸に制作しました。
今回はかなりプロットがしっかりとした形で組み上がってしまったので、後半は「どうやってこの物語のシーンを映像に落とし込もうか?」という点でかなり頭を悩ませました。この辺りで寿命をかなり削った。

制作中に作品を見せたある人に、「これは最早モーション・グラフィクスではないよなー」みたいなことを言われましたが、個人的には、物語が付随するという点に於いてコンセプチュアル・アート寄りではあるかと思いますが、それでも基本的にモーション・グラフィクスの造りに立脚して作っているつもりではいます。
個人的には、テーマ性を付随させる以前に、映像に於ける快楽発生の基盤として、「頭を空っぽにして見ても単純に気持ちいい」というのがあって、それにコンテクストやテーマ性を付随させることによって、隠し味のような奥深さが生まれるようなものだと思います。
美術展などで絵画を見る際に、第一印象として「ああ、これは素敵な絵だ」という、何の前情報も関与しない単純な気持ちよさを最初に感じて、その後に、画家の情報や年代、絵に込められた情報を得ることによって、「なるほど、これはこういったものであるのか」と、また別の視点で楽しむような感じです。
「感覚的理解」と「思考的理解」は別の軸で存在するのではないかと思います。
ただ、その「思考的な理解」と言う名の隠し味を好む人もいるかもしれないし、否定する人もいるかもしれない。このあたりは基本的に各々の好みの問題になると思います。
僕は基本的に絵画や動画を見て「これ面白い/美しい!」と思ったら、「何でこれを面白い/美しいと思ったんだろう?」という思考に飛んで答えを探すタイプなので、そのあたりで作品に含まれるコンテクストを模索する方向へと傾倒するようです。そういう意味では「fabricated myth」は僕みたいな人向きの作品なのかもしれません。まあ、僕自身が一番好きだと思えるものを作ろうと思うので御容赦下さい…。

次どうしよう

とはいえ、ホント今回はいろいろと頭を使い過ぎたので、次はもっと軽い気持ちで何かやってみようと思います。まずPCを買い換えたいのだけれども本当に。ノートがいいなー。
PC買ってAdobe製品手に入れるまでの繋ぎで何か。出来たらいいなー。気紛れに作っていきます。
よろしくおねがいします。